メディアコミュニケーション学部
マス・コミュニケーション学科
江戸川大学では、3年次に所属したゼミナールで専門研究を行い、4年次には卒業論文を執筆します。各ゼミの指導教員は卒業論文のうち優秀な論文を優秀論文として推薦します。優秀論文発表会では、優秀論文を執筆した学生がプレゼンテーションを行います。
<論文の概要>
茨城県鹿嶋市には、『延喜式神名帳』に「伊勢神宮」「香取神宮」とともに日本三大神宮の1つとして数えられた「鹿島神宮」という神宮があり、当時日本三大神宮と数えられていた3つの社を、現在の境内の広さから比較した際、伊勢神宮と鹿島神宮には大きな差があることが分かった。本論文は、市内に点在する神宮所縁の地名の実踏調査と鹿島神宮禰宜、郷土資料館館長、鹿嶋市役所職員への取材調査から、当時の鹿島神宮の神域の広さが伊勢神宮に匹敵することを明らかにし、それほどの広さを有するほどに権威が強かったため、日本三大神宮の1つとして数えられていたと考察した。
<評価のポイント>
本論文は、筆者の地元にある鹿島神宮がなぜ伊勢神宮と並び称される評価を得て『延喜式神名帳』に記載されたのか?という疑問を、先行研究や『常陸国風土記』等の古文書の検証を元に現地での実踏調査から明らかにしようとしたものである。特に、実踏調査で明らかになった点を、鹿島神宮禰宜、郷土資料館館長、鹿嶋市市役所社会教育課の関係者への直接取材による聞き取り調査から確たる証言を引き出し、結論を導き出した点を高く評価したい。古文書の検証とフィールドワークの重要性を示した実証的研究論文として評価できる。
<論文の概要>
日本の里親制度の普及率が他の欧米先進国に比べて低いことから、国は、メディア企業等とともに有名人を使ったCMなどを展開し強力に普及活動を進めている。しかしそうした現行の里親制度を、このまま普及拡大していくことは、里親里子にとって本当の幸せにつながるのかという点をこの論文では検証している。その結果、児童相談所、乳児院の現場の担当者への聞き取り調査と、里親経験者のインタビューから、里子の養育には特有の困難を伴う場合があり、それに対して現状行われている事前研修や、里親になってからの支援体制には不十分な点があること、またメディアを通じた宣伝・広報では、そうしたリスクについてはほとんど伝えられていないことがわかった。そこで論文では、今後の改善策として、里親希望者に事前にリスクを正しく伝えることと支援相談体制の充実が必要であると指摘している。
<評価のポイント>
この論文は、筆者である学生が、千葉県内の児童相談所一時保護所でアルバイトをしていた経験から得られた現行里親制度へのふとした疑問を原点にして、制度の現状と問題点等について千葉県内と学生の出身地である長野県上田市で詳しい調査を行ったものであり、まさに実体験や現場の声に裏打ちされた問題点の検証論文である点が高く評価できる。
特に、なかなか大手メディア等には登場することがない「里親として苦い失敗を経験した当事者」へのインタビューを通じて、里子を養育することに伴う特有の困難さについて浮き彫りにするとともに、事前のリスク伝達や支援体制が不十分である事実をリアルに抽出できたことは、論文が指摘する問題点への強力な裏付けとなった。これも筆者の学生がインタビュー相手探しを始め、地元の乳児院、児童相談所への熱心な取材、働きかけを行った成果であり、これも本論文が評価されるもう一つのポイントである。
<論文の概要>
地域振興は、社会と経済の発展に関して重要な要素である。地域振興の一つの方法として、幅広い世代からの人気と世界的な知名度があるポケットモンスター(ポケモン)の活用が有効であるかについて、調査・研究をおこなった。地域振興に携わる自治体担当者および、一般観光客への取材、アンケート調査を実施。さらに、インターネット記事・書籍等の参考文献を読み込んで研究を深めた。また、韓国とネパールでの新たな海外展開と新たな都府県別「推しポケモン」の提案をおこなった。
<評価のポイント>
増田さんは「ポケモンローカル Acts」の実態を確かめるために、北海道、宮城県、三重県、鳥取県、宮崎県など8つの自治体へのアンケート調査を実施、3カ所でフィールド調査をおこなった。また、「静岡県におけるポケモン地域振興」については静岡県地域振興課への取材、「そらとぶピカチュウプロジェクト」については沖縄県北谷町観光課と台湾(台北)居住者への取材を敢行しており、実態調査に時間をかけて多角的におこなった点を高く評価した。また、調査・研究に留まらず、新たに2つの施策提案をおこなった点も大いに評価したい。