江戸川大学では、3年次に所属したゼミナールで専門研究を行い、4年次には卒業論文を執筆します。各ゼミの指導教員は卒業論文のうち優秀な論文を優秀論文として推薦します。優秀論文発表会では、優秀論文を執筆した学生がプレゼンテーションを行い、最も優秀な論文が選考されます。

2021年度優秀論文

「10代で妊娠をした女性の状況から見える現状や子育て支援について」
鏡 柚希さん

【論文概要】
10代で妊娠し母親になった女性に対する支援が不足している」という問題意識から、必要とする支援について検討することを目的として、若年妊娠や子育て支援に関する先行研究、インタビュー調査を行った。研究成果として、妊娠から子育て期までの支援が不足しているのではなく、10代で妊娠した女性が母親になる過程で、支援の情報が届きにくいことがわかり、情報を伝えること、その活用を促す必要があることを明らかにした。

【選考のポイント】
先行研究をもとに、10代で妊娠する状況について、虐待リスクの高い事例を特定妊婦と関連付けて多角的に検討した。また、10代で妊娠し母親となった当事者2名へのインタビュー調査については、居住自治体の支援と関連付けて実証的に検討した。支援者の視点から重要なテーマに真摯に取り組んだことは評価できる。


「日本における「森のようちえん」に関する一考察」
相馬 美紀さん

【論文概要】
「森のようちえん」の歴史や変遷を調べるとともに、実際の活動に継続的に参加し、この活動の意義と課題を明らかにした論文です。毎回の活動をドキュメンテーションにまとめ、子どもの学びの変容を丁寧に追うとともに、保護者へのアンケートやインタビューを通して、「森のようちえん」の活動が保護者の成長や地域活性化にもつながる可能性があることや、行政の支援が得られない中での今後の課題も明らかにしました。

【選考のポイント】
デンマークやドイツの具体例を挙げながら、日本の「森のようちえん」の特徴をわかりやすくまとめました。何より、3か月実際の活動に参加し、保護者の信頼も得て、この活動が子どもだけでなく、保護者や地域の大人を巻き込んで大人の成長にもつながっていること、行政の課題を明らかにしたことが素晴らしいと思います。


「現代の保育施設に求められることとはー子育ての意識の変化に着目して―」
高橋 梨紗さん

【論文概要】
本研究は、少子長寿化や核家族化、地域社会におけるつながりの弱体化等の社会の変化に伴って、保育施設に求められる子育て支援の変化について、つぎの2点から明らかにしました。第1は、20世紀と21世紀では保護者の子育ての意識がどのように変化したか、第2は保護者の子育ての悩みと保育者の子育て支援は一致しているか、という点です。保護者73名と保育者32名への質問紙調査の結果、21世紀の子育てでは、育児について夫婦で相談をする、夫婦で協力して園の送迎をする等の夫婦で育児をする傾向がみられました。一方で、保育者は保護者の相談にのりたいと考えているものの、保護者の方は育児の悩みを必ずしも保育者には相談しないこと、特に保護者自身の悩み(キャリア形成等)については相談しない傾向が強く現れました。

【選考のポイント】
質問紙調査の分析において、筆者が膨大な記述の分析に根気強く取り組むことで、「保護者は保育者にすべての子育ての悩みを相談しているわけではない、保育者に相談内容を選んでいる」という点を明らかにしたことは大きな成果であると考えています。子育て支援や親支援が様々な施策で謳われる中で、「何が保護者にとっての子育て支援になるのか」という、当事者目線で子育て支援を考えなおす示唆を含んだ論文といえます。


「子どもの権利条約といじめ」
薮崎 智香さん

【論文概要】
子どもの権利条約の有意義さを追求するうちに、なぜいじめに関することがないかという疑問を認識し、その疑問を追求解決するための方策を考え、いじめの発生理由、いじめは被害者本位の基準によるものということに始まり、教員の取り組み方などを確認。被害者は抱え込まないで公的機関を頼ること。人々が日頃から子どもだけでなくあらゆる人々の人権を尊重することが大切であると述べている。結論や示唆は一般的な範囲であったが、そう考えた過程にオリジナリティが感じられた。

【選考のポイント】
子どもの権利条約の有意義さを追求するうちに、なぜいじめに関することがないかという疑問を認識し、いじめをなくす方策を考え。いじめに向き合っていくことの大切さを再確認し、これからの進むべき道筋を考察した。卒論の書き方としての、問題確認、解決策の策定、理論的な考察過程をうまく表現されていることが選考のポイントとなった。


「チームワークとリーダーシップについて」
竹村 七海さん

【論文概要】
男女のバスケットボールチームにおけるリーダーシップが競技パフォーマンスに与える影響について検討された論文である。リーダーシップ研究は特性論が重要視されてきたが、本研究においては、キャプテンのみならず、複数のリーダーの存在がチームに正の影響を与えることを示唆しており、実践研究として評価できる。

【選考のポイント】
男女のバスケットボールチームにおけるリーダーシップが競技パフォーマンスに与える影響について検討された論文である。リーダーシップ研究は特性論が重要視されてきたが、本研究においては、キャプテンのみならず、複数のリーダーの存在がチームに正の影響を与えることを示唆しており、実践研究として評価できる。