vol. 200 2022年7月20日

文化による「当たり前」の違いを知る

文化人類学・民俗学分野の面白さ・魅力

今まで当たり前に考えていた社会を見つめ直し、その裏に隠された文脈を解き明かしていくのがこの分野の魅力だと思います。文化人類学、民俗学を学び始めてからは、ふとした時に触れた物事の裏側を考えるようになり、街中を歩くだけでも様々な疑問を発見するようになりました。「当たり前」のバイアスを発見する能力を養い、バイアスの構造に隠れた文脈を解き明かす工程がこの分野の面白さだと感じています。グローバル化が進む現代では「当たり前」が違う異文化の人々と交流する機会が格段に増えました。自分と相手の「当たり前」の違いがどこにあるのか、相手の文化ではなぜそれらが「当たり前」であるのか。そうした文化を理解する能力というのが重要になってくると思います。今後の社会においてはその能力を養えるというのも魅力の一つではないでしょうか。

現在所属しているゼミ

私は小説や映画が好きなので創作の原点となる文化の構造に興味を抱き、分析する能力を身につけるために阿南透ゼミを選択しました。身近な習慣や風俗に溢れる「当たり前」を掘り下げるのは根底にある文脈を読み解いていくことであり、ひいては社会そのものを見つめ直すことです。日々の暮らしに溢れる「当たり前」から自分たちの生きる共同体の構造を学ぶという点に魅力を感じました。

専門ゼミでの取り組み

今年は新型コロナウイルスの流行によって従来の活動が大きく制限されましたが、今までとは全く違った様式の社会を観察する機会にもなりました。そのため今年のゼミ活動ではコロナで変化した身近な生活の観察を主眼においた活動を行っています。私は近隣の駅周辺の飲食街を比較、また競馬場など特殊な興行の動向に着目して時節に応じた変化の観察に注力しました。

専門ゼミの面白さ

阿南ゼミでは一人ひとりの目的意識が重要視されます。その分テーマ選択の自由度が高く、面白いと思った物事を深めやすいのが魅力だと思います。設問に対して日々の生活から問いかけを見つけ出し、掘り下げて学んだことを共有するのがこのゼミならではの面白さだと感じます。

学外での経験で役立ったこと

学外での経験で最も学びに役立ったのは各国の大使館がブースを出し、様々な国の人々と交流できる『みなと区民祭り』です。その中でもジョージア(旧グルジア)大使館員さんとの会話が印象に残っています。日本での呼称がジョージアに変わったことを話題に出すと、とても嬉しそうな様子で自国の文化やアイデンティティの話を語ってくれました。日本人にとってはロシア語読みから英語読みに変わっただけですが、ジョージアの人々にとっては民族や文化的なアイデンティティに関わることであり、読み方一つとっても捉え方が全く異なるのだと実感しました。そこから文化による「当たり前」の違い、文脈の違いを学び取ることが重要だと気づき、今日の現代社会学科での学びに結びついています。

研究テーマ

私の地元である千葉県船橋市の闇市について研究したいと考えています。太平洋戦争直後に始まり「日本の上海」とまで呼ばれた船橋の闇市の研究を通じて、「当たり前」の日々を過ごす街がなぜ闇市を開いていたのか、他の闇市や現代の船橋と比較することで船橋の地理的な特性や地域社会の構造を解き明かし、地元の風土に関する理解を深めていきたいです。

社会学部現代社会学科3年

O.T.さん

(2022年3月取材)