江戸川大学では、3年次に所属したゼミナールで専門研究を行い、4年次には卒業論文を執筆します。各ゼミの指導教員は卒業論文のうち優秀な論文を優秀論文として推薦します。優秀論文発表会では、優秀論文を執筆した学生がプレゼンテーションを行い、最も優秀な論文が選考されます。

2017年度 優秀論文

最優秀論文
「時間制限による妥協効果の減少と満足度の変化」
柏崎瑞稀さん(浅岡章一ゼミ)


<論文概要>
この研究では、まずPCディスプレイ上に呈示された複数の商品の情報を基に、時間制限のある条件と無い条件で、参加者に最も望ましいと思う商品1つを選択してもらいました。さらに、商品選択に対する満足度を選択直後と1週間後の2度、参加者に回答してもらうことで満足度の変化を測定しています。実験結果から、充分な時間をかけて考える事が妥協的な商品選択の可能性を高める事、そして、そのような熟考が必ずしも選択後の高い満足感の持続には繋がらない事を明らかにしています。

<選考のポイント>
先行研究の知見に基づいて仮説を立て、それを実験的な手法を用いて検証するという事が高いレベルで出来ていたと考えられます。また、実験的な研究としては変数も多く、複雑な内容の研究となりましたが、その内容を限られた時間の中で分かりやすく説明したプレゼンテーション技術も非常に高く評価できるものでした。

二位
「ロマンティックレッド現象に関する研究」
篠原彩さん(薊理津子ゼミ)


<論文概要>
ロマンティックレッドとは、女性が赤い服を着た場合に、男性から魅力的に見えるという海外の研究で見出された現象です。篠原さんは日本でもロマンティックレッド現象が見られるかどうか、また、ロマンティックレッド現象と性役割パーソナリティ(社会的に定められた性)との関連性についても検討を行いました。結果、ロマンティックレッド現象が概ね確認され、赤い服を着た女性は魅力的に評価されること、男性は赤い服を着た女性に馴れ馴れしくなることを示しました。

<選考のポイント>
ロマンティックレッド現象に関する日本における研究が少なく、比較的目新しい研究テーマであること、また、本実験で使用する刺激と質問を準備するために、2回の予備調査を実施した点などの丁寧な研究手続きが評価されたと考えられます。発表会ではプレゼンテーションも高く評価されました。

三位
「夫婦間コミュニケーションパターンと母親の子どもとの関係満足感との関連」
川原田未由さん(山本隆一郎ゼミ)


<論文概要>
母親の育児不安は、母親の“母親としての同一性の再確立”や心身の健康と関連しているだけでなく、虐待などの関連因子であると指摘されています。これまでの研究では、配偶者からのさまざまなサポートは母親の育児不安にとって重要な関連因子であるとされていましたが、「日常的な相互作用(母親と父親がどのように相互に関係しあっているか)」という視点からの研究はあまり行われていませんでした。本研究では、柏市内の幼稚園・保育園・認定こども園に在籍する未就学児の母親を対象にweb調査を実施しました。その結果、夫婦間のコミュニケーションパターンは6類型に分類され、類型間で母親の関係満足感に統計学的に意味のある違いがあることが分かりました。特に、お互いを尊重しあい共感的に接しあう「お互い大好き夫婦」の母親は、子どもとの関係満足感が高いことが明らかになりました。誰もが不安を抱える子育てにとって、夫婦が手を取り合うことはとても大事ですね。

<選考のポイント>
計11園からご協力を頂き大規模な調査を実施した点、研究倫理を最大限重視し日々忙しいお母さん方や協力園の負担が少ないようにweb調査の手続きを工夫した点、先行研究の多い分野の研究であるものの丁寧にクリティークしオリジナリティを明確化した点などが高く評価されたと考えられます。

その他の優秀論文は以下のとおりです。
・性的指向の相違に対する受容感 横山優美さん(福田一彦ゼミ)
・初心者の乗馬体験が気分の改善および自我状態の変化に与える影響について 石田紗也花さん(室城隆之ゼミ)
・相手との関係性が対人葛藤解決方略に与える影響 般若蓮さん(中村真ゼミ)
・自己開示する人としない人での精神的健康のちがいについて 白石絵梨さん(柴田良一ゼミ)
・移し変え動作から見た手の巧緻性の発達に関する研究 増田崇広さん(野田満ゼミ)