江戸川大学では、3年次に所属したゼミナールで専門研究を行い、4年次には卒業論文を執筆します。各ゼミの指導教員は卒業論文のうち優秀な論文を優秀論文として推薦します。優秀論文発表会では、優秀論文を執筆した学生がプレゼンテーションを行い、最も優秀な論文が選考されます。

2024年度 優秀論文

最優秀 川崎 瞭さん 
「睡眠教育の睡眠改善効果:児童生徒を対象としたクラスターランダム化比較試験に関する系統的レビュー」


<論文概要>
児童生徒に対する睡眠教育の有効性を検討した研究は数多くあり、それらを統合した系統的レビューもいくつか報告されていますが、一貫した知見は得られていません。その理由として、既報の系統的レビューでは、包含基準が広く、「個々の研究での睡眠教育のあり方(内容や実施期間など)による研究間誤差」と「様々な効果検証デザインの研究が包含されていることによるバイアスの混入」の両者の影響によって結論が不安定になっていると考えられます(いわゆる、リンゴとオレンジ問題)。そこで本研究では、クラスターランダム化比較試験のみを対象に(効果検証デザインを統制した)系統的レビューを行いました。メタ分析による定量的統合の結果、研究間異質性が高く(睡眠教育のあり方の違いが反映されていると解釈される)、睡眠教育は睡眠時間や睡眠習慣に統計学的に意味のある効果は確認されませんでした。そこで効果量の高い研究を抽出し定性的に統合したところ、睡眠教育の効果が高かったとされる研究では睡眠教育で学んだ知識と行動変容のギャップを埋めるための工夫が行われていることが見出されました。

<選考のポイント>
先行研究に対する精緻な批判的検討に基づく研究課題設定と定量・定性の両面からの吟味、多角的な考察、論理的で分かりやすいプレゼンテーションが高く評価されました。

「睡眠教育の睡眠改善効果:児童生徒を対象としたクラスターランダム化比較試験に関する系統的レビュー」要約

二位 一ノ瀬 朱花さん
「表情と音声の一致不一致が顔の各部位への注視時間に及ぼす影響~~アイトラッカーを用いた検討~~」


<論文概要>
感情判断には表情や声のトーンが影響を与えます。例えば、顔は笑っているのに声が怒っているなど矛盾した情報が与えられた場合、私たちは音声よりも視覚情報に注意を向けやすいとされます。本卒論では、音声と表情の一致(喜び表情と嬉しそうな声)と不一致(喜び表情と怒っている声)の時に、人はどの部分に注目するのかを、アイトラッカー(視線計測器)を用いて検討しました。その結果、表情においては目への注視が最も長く、特に喜び表情で怒った音声の時は、他の組み合わせに比べ注視時間が長くなることが明らかになりました。このように、私たちは視覚や聴覚情報を総合的に組み合わせて人の感情を判断していることが明らかになりました。

<選考のポイント>
表情と音声といった複数の感覚器官を組み合わせ、どの組み合わせの時に、顔のどの領域に視線を向けやすいのかをアイトラッカーを用いて視線情報を取得し、明らかにした点が評価されたと思います。また、本卒論はコミュニケーションにおいて求められる表情判断や理解にもつながる研究につながり、意義深い研究だと考えられます。

「表情と音声の一致不一致が顔の各部位への注視時間に及ぼす影響~~アイトラッカーを用いた検討~~」要約

三位 佐藤 璃乃さん
「内受容感覚の正確性が社会的排斥状況下における選択的注意機能に与える影響」


<論文概要>
私たちの心臓の鼓動や、血圧などの身体内部の感覚を感じ取る能力である内受容感覚の正確性は、私たちの情動調整機能と関連があることが明らかにされています。本研究では、内受容感覚の正確性を客観的に測定し、その正確性が、ネガティブな感情を引き起こされる事態における認知機能の維持に影響を与えるかを検討しました。その結果、内受容感覚の正確性の違いと、ネガティブな感情を引き起こされた際の認知機能との関連は確認されませんでした。

<選考のポイント>
内受容感覚の正確性と情動調整との関連は多く研究されていますが、それらが認知機能に及ぼす影響についてはこれまであまり研究されていません。その未検討の課題を、実験的な手法で解明しようとした試みが高く評価されました。また、発表では、複雑な要因計画の本研究を一つずつ丁寧に説明することで、多くの方の理解を得られたのだと思います。

「内受容感覚の正確性が社会的排斥状況下における選択的注意機能に与える影響」要約