社会学部
人間心理学科
江戸川大学では、3年次に所属したゼミナールで専門研究を行い、4年次には卒業論文を執筆します。各ゼミの指導教員は卒業論文のうち優秀な論文を優秀論文として推薦します。優秀論文発表会では、優秀論文を執筆した学生がプレゼンテーションを行い、最も優秀な論文が選考されます。
<論文概要>
この論文では、画像の複雑性とその画像に対する評価の関係性が眠気の有無によって変化するかを検討しています。Web上で参加者に対して回答時点での眠気と前夜の睡眠について質問をするとともに、複雑性の異なる様々な画像を順に呈示し、各画像に対する好ましさの判定を求めています。解析の結果、前夜の睡眠時間が充分である群では複雑な画像ほど「面白さ」の評価が上昇していたのに対して、前夜の睡眠時間が短い群ではその関係性が不明瞭になる事を確認しました。
<選考のポイント>
コロナ禍で研究手法が限られる中、Webを介して実施する認知課題の利点を活かし、大きな個人差が予想される感性評価の問題に切り込む挑戦的な内容が高く評価されました。近年,重要視される研究の再現性にも十分に配慮された研究手法と報告の正確さ、そして解り易く丁寧なプレゼンテーションも大変すばらしいものでした。
<論文概要>
近年、感覚処理感受性が高い個人は「Highly Sensitive Person(HSP)」と呼ばれ、社会的な関心を集めています。これまでの研究で、HSPはコミュニケーションスキルの低さや不安の高さとの関連が認められています。そこで、本研究では他者への援助要請の質に焦点を当て、HSPと援助要請スタイルとの関連をWeb調査にて検討しました。その結果、HSPは対人刺激に敏感であり、対人関係への不安やストレスが増強されやすいことで、援助要請によるストレス負荷を避ける傾向が確認されました。つまり、HSPは、幅広い対人関係における援助要請に回避的になりやすい可能性が示唆されました。
<選考のポイント>
HSPに関する研究は、まだ発展途上にあるといえます。その中で、感覚処理感受性が環境と行動をどのように調整するかという本研究の着眼点は、社会的風潮を捉えたオリジナリティに富んだものでした。その点が高い評価を受けたと考えられます。また、研究内容をわかりやすく明瞭に伝えたプレゼンテーション技術も素晴らしく、研究に対する真摯な姿勢も高い評価を受けました。
<論文概要>
他者を説得するときに、表情などの非言語情報は効果的に働くことが示されています。本研究は、非言語情報の中でもスピーチ速度に着目しました。そして、スピーチ速度が説得に及ぼす効果と,説得を妨げる心理的リアクタンスに及ぼす影響を検討しました。結果、先行研究に基づいて設定した仮説は、ほとんど支持されませんでした。実験手続きに関する問題点や説得を行う話者の性別、説得テーマによる影響が考察されました。
<選考のポイント>
丁寧な論理構成と刺激作成の過程が評価されたと考えられます。また、コロナ禍において、人と人との対面接触の機会が少なくなり、コロナ禍前よりも非言語情報が減少した一方で、音声のような特定の非言語情報がコミュニケーションに大きな役割を果たしています。このような時代背景も、関心を集めたポイントではないでしょうか。