社会学部
人間心理学科
優秀論文の紹介
江戸川大学では、3年次に所属したゼミナールで専門研究を行い、4年次には卒業論文を執筆します。各ゼミの指導教員は卒業論文のうち優秀な論文を優秀論文として推薦します。優秀論文発表会では、優秀論文を執筆した学生がプレゼンテーションを行い、最も優秀な論文が選考されます。
<論文概要>
この論文では、大学生を対象として一般的な質問項目を用いた調査と共に、反応時間を基に認知傾向を測定する潜在連合テストをWebを介して実施し、朝型-夜型生活に対する顕在的・潜在的認知(ポジティブ-ネガティブ)と睡眠習慣との関連を検討しています。その結果、実際に夜型の生活をしている学生ほど、夜型に対するネガティブな認知を有する傾向が示されました。この事は、生活が夜型化している学生であっても一概に夜型生活を楽しんでいるのではなく、そのような生活に問題を感じて苦しんでいる可能性を示すものと考えられます。
<選考のポイント>
コロナ禍で研究手法が限られる中,Webを介した認知課題を取り入れた挑戦的取り組みが高く評価されました。また、大学生が有する朝型-夜型に対する認知の傾向に着目した点もこれまでの研究には存在しなかった新しい視点といえるでしょう。大学生に対する睡眠教育の在り方について、解析結果を基に考察したプレゼンテーションも、大変すばらしいものでした。
<論文概要>
不眠障害患者に特有な認知的特徴として注意バイアスが指摘されています。注意バイアスとは、「寝床で時計のカチコチ音が気になる」といった睡眠や眠れないことに関連した刺激に注意が占有される認知的な特徴です。これまで注意バイアスは、睡眠関連刺激と中性刺激に対する反応時間差を頼りとしたさまざまな認知課題により評価されてきました。本研究では近年、不眠障害群と健康対照群を対象に認知課題による注意バイアスの評価を行った研究を系統的にレビューしました。その結果、近年では、情動ストループ課題とドットプローブ課題が主に用いられており、情動ストループ課題は結果に一貫性が乏しく、ドットプローブ課題は安定して不眠障害群と健康対照群を弁別できる可能性が示されました。
<選考のポイント>
コロナ禍で新規のデータ取得による研究に大きな制約がある中、系統的な先行研究のレビューとメタ分析による先行研究の定量的統合という方法で新たな知見を見いだせたことが高く評価されました。また、研究成果を伝えたプレゼンテーションも分かりやすく明瞭であり高い評価を得ました。
<論文概要>
人の呼び名には、あだ名や名前に「さん」付けなど様々なものがあります。その中には呼ばれて嬉しい呼び名や、嫌な呼び名があります。本研究では、呼び名によって,その呼び名を呼ばれた当人の魅力に差が生じるか検討しました。実験準備として,実験協力者に3つの呼び名(呼ばれたい呼び名/呼ばれたくない呼び名/苗字に「さん」づけ」)を呼ばれた場面を想像して顔写真を撮影するよう依頼しました。本実験にて、これらの写真の魅力を評価するよう求めたところ、呼び名による表情への影響が示されました。
<選考のポイント>人が社会生活を送る上で、どのような呼び方であれ、他者の名を呼んだことがない、他者から名を呼ばれたことがないという人はいないでしょう。呼び名は社会生活の中で当たり前のものですが、呼び名をテーマとした研究は数少ないです。そのようなテーマに取り組んだというオリジナリティが高く評価されたのではないかと思います。