江戸川大学では、3年次に所属したゼミナールで専門研究を行い、4年次には卒業論文を執筆します。各ゼミの指導教員は卒業論文のうち優秀な論文を優秀論文として推薦します。優秀論文発表会では、優秀論文を執筆した学生がプレゼンテーションを行い、最も優秀な論文が選考されます。

2024年度 優秀論文

最優秀論文
「「B.革新」が日本全体に与える影響について――アリーナ建設の現状と今後の課題――」
松本 莉緒さん(野上ゼミ)

〈論文概要〉
本研究は、日本のプロバスケットボールリーグ「B.LEAGUE」の「B.革新」によって建設されたアリーナが、地域や日本全体に与える影響について考察したものである。B.LEAGUEに所属する2チームの新アリーナについてフィールドワークとアンケート調査を行い、分析した結果、新アリーナの建設や既存アリーナの改修は、アリーナスポーツ界の発展を牽引し、「B.革新」には地域貢献および国内プロスポーツ全体の発展を牽引する可能性が十分にあることを示した。

〈選考のポイント〉
現在活況を呈しているB.LEAGUEの発展を下支えしているインフラストラクチャーであるアリーナに着目し、長崎市と船橋市を事例に精緻な調査が行われている。執筆者本人がチームのボランティアスタッフの活動に従事した経験に基づくアクティブリサーチとしても非常に高いレベルでまとめられており、最優秀賞にふさわしい優れた論文である。


優秀論文
「ふるさと納税制度は地域創生に貢献できるのか――「恩恵」と「弊害」 から考察する制度の役割とその展望――」
成沢 亜璃さん(佐藤ゼミ)

〈論文概要〉
本研究は、ふるさと納税制度が地域創生にどのように貢献するのかを「恩恵」と「弊害」の両面から分析したものである。制度の概要や歴史を整理し、成功事例をもとに地域経済活性化への効果を検討するとともに、過度な返礼品競争や都市部の税収減少といった問題点を指摘した。また、大学生を対象とした意識調査を通じ、若年層の関心度を探り、制度の将来展望を考察した。持続可能な地域創生のためには、制度の適切な運用と改善が不可欠であることを示した。

〈選考のポイント〉
本研究は、ふるさと納税の制度的課題とその影響を深く掘り下げ、大学生への意識調査や現場踏査を通じて現状を分析し、今後の方向性を提示した点が高く評価された。また、制度の恩恵と弊害をバランスよく捉えつつ、理想と現実のギャップに切り込んだ批判的視点が際立っている。さらに、スライドの視覚的工夫や明確な発表構成により、聴衆に伝わりやすい発表となったことも高評価の要因である。


特別賞
「心霊スポットは妖怪である――千葉県富津市「観音隧道」における異界的雰囲気と集合的記憶――」
岩埜 紘史朗さん(川瀬ゼミ)

〈論文概要〉
本論文は、人は心霊スポットおよび「霊」をどのように体験しているのかという問いに対し、民俗学の新理論として期待される雰囲気論の視点からアプローチするものである。いわゆる「トンネル怪談」に関するオカルト本等のメディア言説と地域住民の語りの分析を通して、「噂は広まっていくうちに尾ひれがつく」という通念とは異なる傾向性が見られることを指摘するとともに、妖怪研究のフロンティアとしての心霊スポット研究の可能性について考察した。

〈選考のポイント〉
本研究では隧道(トンネル)における怪異現象の集合的記憶の所在に着目し、膨大な文献と長期間にわたるフィールドワークを経て、68ページに及ぶ大作をまとめあげた。本論文は畢生の情熱を傾けて完成した汗と努力の結晶であり、称賛に値する。大学院で研究を継続するうえで、将来の可能性を十二分に示していると高く評価できる。