2024.03.19
遠山海斗さんと指導教員の川瀬由高講師
社会学部現代社会学科4年の遠山海斗さんが第22回櫻井徳太郎賞一般の部で奨励賞を受賞しました。一般の部での受賞は1編のみに限られ、大賞(賞金30万円)または奨励賞(賞金20万円)のどちらかになります。「該当なし」となる年もある厳しい審査水準を超えた見事な受賞となりました。
櫻井徳太郎賞は、民俗学・歴史学・考古学を通じ、地域を基盤にした学問の発展・発達と、地域を生かす立場から研究を進める人材の育成を図るとともに、次代を担う青少年の地域研究の奨励と、郷土愛を育むことを目的とし、平成14年度に創設されました。
奨励賞を受賞した遠山さんの論文題目は「グラフィティの境界性――おっさんシールの芸術的表現と公共空間における社会的価値の対立」です。本論文では、千葉県木更津市の街頭に多数貼られている正体不明のステッカー「おっさんシール」を対象に、このグラフィティ(都市に描かれた落書きの総称)がどのような目的で生み出され、また地域社会においてどのような影響を与えているのかを、フィールドワークに基づき探求しました。2021年10月から2023年11月ののべ69回にわたる路上観察調査、およびグラフィティ・ライターへのインタビュー調査、そして他のグラフィティ作品との比較から、おっさんシールには「誰が描いているかわからない面白さ」があり、それが芸術と違法の間でゆれる多様な評価と解釈を可能にしていることを明らかにしました。
■遠山海斗さんコメント
この度、名誉ある賞を頂戴し、誠に光栄に思います。このコンテストは、指導教員である川瀬由高先生にお声がけいただいたことを契機に、私の目標となっておりました。受賞の通知をいただいた際、指導していただいた川瀬先生をはじめ、共に議論を深めたゼミ生や、調査にご協力いただいた皆様があってこその受賞だと深く感じました。本研究を支えてくださった方々に心から感謝申し上げます。
■川瀬由高講師コメント
出藍の誉れであると、指導教員として大変誇らしく思います。遠山さんは、2年生向け必修科目「現代社会演習・実習」におけるフィールドワーク実習のなかで、本研究テーマを見出しました。その後も継続して路上観察調査やインタビュー調査を実施し、2年以上かけて調査データを積み重ねたことが、この論文を独創的かつ迫力あるものとしています。現代世界では、「役に立つ技術や知識」が一瞬で移り変わり、既存の枠組みでは解決不能な事柄も増えつつあります。だからこそ、自ら現場に立ち、現場から問題を捉え直していくフィールドワークという手法は、これからの社会を生き抜くための確かな支えとなってくれるはずです。今後のますますのご活躍を祈念いたします。
表彰を受ける遠山海斗さん