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国立公園研究所

国立公園写真エッセイ

「魅力的な自然とは」

屋久島固有亜種のヤクシマヤマガラ

<撮影・執筆者の情報>

国立公園:屋久島国立公園
【文】公益財団法人屋久島環境文化財団 インストラクター 勘場 奈美
【撮影者】公益財団法人屋久島環境文化財団 研修課長 吉國 三宝
【撮影年月日】平成30年4月19日
【撮影場所】ヤクスギランド

大都市横浜から、大自然屋久島に移住して三年が経った。かつての住まいの近くでは、ムクドリの大群が電線にずらりと並び、街路樹ではシジュウカラがちょこまかと飛び回っていた。しかし今では電線に止まっているのは天然記念物のカラスバト、木々の間を飛び回るのは固有亜種のヤクシマヤマガラだ。所変われば身近な生き物も変わってこようが、あまりの変わり様である。
屋久島に引っ越してきて最初に驚いたのが、「島人は山には行かない」ということだった。世界遺産の住人達は身近すぎる大自然を持て余している印象を受けたことを覚えている。
私自身、移住したての頃はカラスバトを見ては感涙し、ヤクシマヤマガラの声がすれば姿を探し回っていたが、今ではすっかり身近な生き物となってしまった。
先日、島内でハトを見かけた。駅前にいるような、ごく普通のドバトである。しかし気づけば私はカメラを構えていた。どうやら人間とは、手の届くものよりも、届きにくいものの方がずっと魅力的に見えるらしい。